遺留分侵害額請求の消滅時効と除斥期間
相続が発生した場合、相続人には、相続財産についての最低限の取り分である「遺留分」が法律上認められる場合があり、相続人間で相続分を決める場合には他の相続人の遺留分を侵害しないようにする必要があります。
では、自己の遺留分を他の相続人に侵害されてしまった場合、いかなる手段をとることができるのでしょうか。
消滅時効と除斥期間についても併せて解説します。
遺留分侵害額請求とは
遺留分とは、被相続人の兄弟姉妹以外の法定相続人の方(配偶者や子、直系尊属)が遺産を相続する際に主張できる最低限の取り分のことをいいます。
相続財産分配の結果、他の相続人が自己の遺留分を侵害しているような場合には、その相続人は、遺留分を侵害した他の相続人に対して遺留分侵害額請求を行うことにより、遺留分に相当する遺産を金銭の形で取り戻すことができます。
なお、相続人のうち、お亡くなりになった方の兄弟姉妹の方に関して、民法では遺留分を認めていません。
そのため、相続人のうち、お亡くなりになった方の兄弟姉妹に当たる方は遺留分侵害額請求を行うことができません。
遺留分侵害額請求権行使の消滅時効と除斥期間
遺留分侵害額請求権には、消滅時効による権利制限に加えて、除斥期間と呼ばれる権利行使の期間制限が存在します。
遺留分権利者は、相続の開始及び遺留分侵害があったことを知った時から1年が経過すると、消滅時効により遺留分侵害額請求を行使することができなくなります。
また消滅時効が完成していなくとも、相続開始の時から10年が経過すると除斥期間の定めによって遺留分侵害額請求をすることができなくなります。
除斥期間の場合には、遺留分権利者が相続の開始や遺留分侵害について知らなかったとしても、10年の経過によって当然に権利を行使することができなくなります。
この点が消滅時効の場合と大きく異なる点となります。
また、遺留分侵害額請求をすでに行ったという場合であっても、請求時から10年(2020年3月31日以前に行使した遺留分侵害額請求権の場合)、または、5年(2020年4月1日以降に行使した遺留分侵害額請求権の場合)が経過した場合にも消滅時効が完成するため注意が必要です。
遺留分侵害額請求の時効の完成を止めるためには
遺留分侵害額請求権の消滅時効の完成を止めるためには、消滅時効が完成する前に遺留分侵害額請求を相手方に行う必要があります。
なお、遺留分権利者が相手方にいつ請求を行ったのかを明確化してトラブルを防止するため、配達証明付きの内容証明郵便を利用して請求を行うことが重要です。
なお、上述の通り、一度遺留分侵害額請求を行ったとしても、請求時から一定期間が経過すると消滅時効が完成してしまう可能性があります。
そのため、すでに行った遺留分侵害額請求に対して相手方が何らの対応をしてこない場合には、消滅時効が完成する前に再度の請求を行う必要があります。
この請求の際にも、配達証明付きの内容証明郵便によって行うようにしましょう。
このほか、消滅時効の完成を止める手段としては、訴訟の提起も考えられます。
遺留分侵害額請求のみでは相手方が何らの対応もしないといった場合には、訴訟を提起することも有効な手段です。
相続に関するご相談は神戸ポート法律事務所におまかせください
今回は、遺留分侵害額請求の消滅時効と除斥期間について解説していきました。
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