遺言書にはどのような効力があるか
遺言は遺言者の死亡により効力が生じます(民法985条1項)。
遺言の効力を詳しく言う前に、遺言事項について少々説明する必要があります。つまり、遺言書に記載されている事項は、すべてが効力が生じるわけではありません。遺言事項以外の事項は遺言書に書かれているとしても、効力が生じません。例えば、葬式の方法、婚姻や縁組の指定、家族間の介護や扶養の方法などは遺言事項ではありません。そのため、仮に遺言者は遺言書で自分の葬式方法を指定したとしても、法律上無効です。
その一方で、遺言事項についての記載は、前述したとおりに、遺言者の死亡により効力が生じます。遺言事項になる事項は、相続分の指定(民法902条)、推定相続人の廃除(民法893条)、未成年後見人の指定(民法839条)などがあります。遺言事項の範囲については、ややこしいところがあります。
そのため、迷った際には、個人で判断せず、弁護士などの専門家とのご相談をお勧めします。
遺言書での遺言事項についての記載は、判例により、物権的効力を有します。簡単にいえば、遺言事項は遺言者の死亡により直接的に効力が生じます。
例えば、Aは遺言書に、「私の遺産は全部Bに相続させる」と書いたら、Aの死亡により、特段の事情がないかぎり、BはAの死亡の時に直ちにAのすべての遺産を相続します(とりあえず遺留分の問題はここでは無視します)。
しかし、仮にAとBの間に第三者Cが存在すれば、Bは直ちにCに「Aの遺産は私のもの」と主張できるかという問題があります。
判例により、Cは第三者なので、Bは対抗要件を有しなければCに主張できないです。
遺言は法律行為であるので、他の法律行為と同じように、遺言の無効と取消も主張される余地があります。例えば、遺言者に意思無能力は遺言の無効理由になります(民法3条の2)。遺言者の遺言は遺言者の本意ではなく、錯誤、詐欺、強迫により、書かれたものと証明できれば、遺言の取消を主張できます。
たまに停止条件がついている遺言も存在します。たとえば、「Bが事業を引き継いでくれるなら、遺産を相続させる」などです。
このような遺言は遺言者の死亡の時に直ちに有効になりません。
遺言者が死亡した後、条件が達成した時(Bが事業を引き継いでくれた時)に、遺言者の遺言の効力が生じます(民法985条2項)。
つまり、遺言の効力の有無は、遺言の効力の瑕疵の有無、遺言事項の内容などの様々な要素によって決められます。
そのため、一つの遺言の効力はいつから発生するか、どの範囲内で発生するかなどについて、具体的にケースバイケースで分析する必要があります。
遺言の効力に関するトラブルにあった際に、一人で悩まずに専門家と相談するのが一番役立つと思われます。
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